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盛岡地方裁判所 昭和56年(ワ)377号 判決

原告

諫原三郎

被告

大崎寅蔵

主文

一  被告は原告に対し、金六八五万二四七八円と、これに対する昭和五六年一一月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金九二六万五九七円とこれに対する昭和五六年一一月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は昭和五五年七月二七日午後四時一五分ころ、村道五枚橋線(以下単に本件道路という。)を軽米町方向より伊保内方向に自己所有原動機付自転車(以下単に原告車という。)を運転進行中、九戸郡九戸村大字長興寺一五―六六―一一五路上付近にさしかかつたところ、自宅前から本件道路へ出て軽米町方向に左折進行して来た被告保有、被告運転の普通貨物自動車(以下単に被告車という。)と衝突して転倒し、右下腿骨骨折の傷害を負つた。

2  被告の過失(物損について)

右事故は被告が左折に際し、見通しの悪い左側の安全確認を怠つたために起きたものであり、被告の過失によるものである。

3  損害額

(傷害による損害)

原告は事故発生当日の昭和五五年七月二七日から昭和五六年二月一八日まで県立一戸病院で入院治療を受けた。

(一) 付添看護料 計金四〇万七〇六〇円

(1) 妻キミヨ入院中付添 二九日間 一日、金三〇〇〇円 金八万七〇〇〇円

(2) 職業付添人下村タミ入院中付添 八月二五日、二六日二日間 金一万五〇六〇円

(3) 姉三春トミ入院中付添 五〇日間 一日、金二八〇〇円 金一四万円

(4) 妻キミヨ付添 五五日間、但し昭和五五年一〇月一六日から昭和五六年二月一八日の退院まで、毎週三回、月・水・金曜日一戸病院から伊保内町マツサージ療養所まで付添 金一六万五〇〇〇円

(二) 通院交通費 計金四一万三六一〇円

(1) タクシー代 金二五万六四二〇円

(2) バス代 金三万一八〇〇円

(3) 国鉄料金 金六八九〇円

(4) ガソリン代 金一一万八五〇〇円

原告の長女が伊保内から一戸病院まで片道二五キロメートル往復自家用自動車使用ガソリン代一日、金一五〇〇円として七九日分

(三) マツサージ料金 金一万八〇〇〇円

(四) 諸雑費 計金一七万一一〇〇円

(1) 日用品等 一日、金五〇〇円 入院期間二〇七日分 金一〇万三五〇〇円

(2) 入院諸雑費 簡易トイレ(金一万三〇〇〇円)白着(金四八〇〇円)半袖(金一六〇〇円)ズボン(金一万二〇〇〇円)つえ(金五六〇〇円)文書料(診断書ほか金一万六〇〇円)保険会社関係書類作成調査料(金二万円) 金六万七六〇〇円

(五) 入院中休業による損害 金七七万四〇七円

入院期間・昭和五五年七月二七日から同五六年二月一八日まで二〇七日間

年間所得・金一九四万六四一円(一日当り金五三一六円八二銭強)

原告の営業所得に対する寄与率・七〇%

(六) 傷害に対する慰藉料 金一六〇万円

(七) 後遺症による損害 計金七二四万九四二〇円

(1) 逸失利益 金五五七万九四二〇円

原告は、現に身体障害者福祉法施行規則別表第五号の第五級に該当する身体障害者で、これまで営業の重要部分であつた出張料理は全く不能であり、起居についても付添を要する程で家業は殆んど不可能にちかい。

労働能力喪失率・八〇%

年間所得・金一九四万六四一円

本人寄与率・七〇%

(2) 後遺障害に対する慰藉料 金一六七万円

(物損)

(八) 原告車残存価額 金二万円

以上総合計 金一〇六四万九五九七円

(九) 補填された金額の総額 計金二二三万円

(1) 自賠責保険給付金 昭和五六年五月一三日受領金二〇九万円

(2) 被告よりの見舞金品 合計金一四万円相当

以上差引額 金八四一万九五九七円

(一〇) 弁護士費用 金八四万一〇〇〇円

結局請求金額は金九二六万五九七円となる。

よつて原告は被告に対し運行供用者責任(人身損害について)あるいは不法行為(物損について)による損害賠償金として金九二六万五九七円と、これに対する事故発生の日の後である昭和五六年一一月七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による金員の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  1を認め、2を否認する。

2  3のうち、原告が昭和五五年七月二七日から昭和五六年二月一八日まで県立一戸病院で入院治療を受けた事実、及び(九)の(2)の事実を認めるがその余は否認する。

三  抗弁(運行供用者責任に対する抗弁及び過失相殺)

1  被告には運行上の過失はなかつた。

2  本件事故は、原告が酒気を帯びたうえ、道路右側を進行していたことにより発生したものであつて、右は原告の過失である。

3  被告車には構造上の欠陥や機能上の障害がなかつた。

四  抗弁に対する認否

否認する。

第三証拠

証拠関係は本件記録中の証拠目録のとおりであるから、ここに引用する。

理由

一  事故の発生

原告が昭和五五年七月二七日午後四時一五分ころ、本件道路をを軽米町方向より伊保内方向に原告車を運転進行中、九戸郡九戸村大字長興寺一五―六六―一一五路上付近にさしかかつたところ、自宅前から本件道路へ出て軽米町方向へ左折進行して来た被告保有、被告運転の被告車と衝突して転倒し、右下腿骨骨折の傷害を負つた事実は当事者間に争いがない。

二  原・被告の過失

1  被告の過失(物損についての請求原因)

被告において左折に際し、左側の安全確認を怠つた過失があつたとする原告の主張について判断する。

成立についての争いのない甲第一〇号証及び乙第三号証によれば、被告は検察官及び司法巡査に対し、左折に際し別紙図面の〈1〉点において左側の安全を充分確認しなかつた旨の供述をしている事実が認められるが、他方被告本人尋問においては右〈1〉点において左側の安全を確認したが、原告車は存在しなかつたとの供述をしているので、いずれの供述が真実かについて検討する。

前記甲第一〇号証、同乙第三号証、成立について争いのない乙第一号証、被告本人尋問の結果、検証の結果を総合すれば、(以下、点の表示は別紙図面による。)、〈1〉点からの左側の見通し可能の距離は三〇メートル(〈P〉点と〈P1〉点間の距離)である事実及び、被告は時速五キロメートルで〈1〉点から二、六メートル離れた〈2〉点へ進行したところ、〈2〉点において一一、二メートル離れた〈ア〉点上の原告車を発見し、〈3〉点まで進行して急制動をかけ〈4〉点で原告車と衡突した事実が認められる。

右認定事実からすると、被告車が〈1〉点から〈2〉点へ進行するのに約一、八七秒かかつたことが認められ、一、八七秒で〈P1〉点と〈ア〉点間の距離おおよそ一八、八メートルを進行する速度を時速に換算するとおよそ三六キロメートルとなる。

そうすると前記の被告のいずれの供述が正しいかは原告車のおおよその時速が三六キロメートル以上であつたか、以下であつたかにかかるということができる。

そこで原告車の事故当時の速度についてみるに、原告本人は時速三〇キロメートルから四〇キロメートルであつたとの、被告本人は四〇キロメートル以上はあつたとの供述をする他は、スリツプ痕など、原告車の時速が三六キロメートル以上であつたか以下であつたかを確定する証拠はない。

そうすると原告車の速度から、被告の〈1〉地点での左側安全確認の有無を認定することができない。

しかしなお被告には以下のとおりの過失があつたものということができる。

すなわち、道路走行車両は道路外からの進入車両に対し優先関係を有することは明らかである。換言すれば道路外からの進入車両は道路走行車両の走行を妨げる方法で道路へ進入してはならない義務を負う。従つて被告は本件道路へ進入するに際し、道路内へ漸次被告車の頭部を出して、道路進行車両に注意を促したうえなお一時停止して左右を確認して左折しなければならなかつたものである。にもかかわらず、前認定事実のとおり被告は〈1〉から〈2〉、〈3〉へと時速五キロメートルのままで漫然と進行しており右義務をはたしたとはいえず、また前認定事実によれば被告は〈2〉点において〈ア〉点の原告車を発見しているのであるから、被告車が〈2〉点に達する以前に本件道路を被告車の頭部を出した地点で一時停止をし、左側を確認して前述の注意義務をはたすことによつて本件事故の発生を防止することができたものである。

従つて被告には右の意味における過失があつたというべきである。

2  運行供用者責任に対する抗弁及び過失相殺

(一)  運行供用者責任に対する抗弁

前述のとおり被告に運行上の過失がなかつたとは言えず、そうすると他の抗弁事実について判断する必要がない。

(二)  過失相殺

原告が事故時に酒気を帯びていたかについては、成立について争いのない甲第九号証及び原告本人尋問の結果によりこれを認めることができず、他にこれをうかがうべき証拠はない。

そこで原告車が事故時に道路右側を進行していたかについて検討するに、被告本人尋問の結果及び検証の結果によれば、本件道路の中央線付近に原告車の左ステツプの痕跡が存在する事実が認められ、原告本人尋問の結果によれば、原告は警察官から、中央線より一〇センチメートル右側を走つた跡がある、と聞かされた事実が認められ、右事実を総合すると、原告車は中央線のやや右側を走行していたことが認められ、原告本人の右認定に反する供述部分を採用することはできず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

次に前記乙第一号証、被告本人尋問の結果及び検証の結果を総合すれば、被告は時速五キロメートルで左折進行中、一一、二メートル離れた地点において原告車を発見したが、そのまま瞬時に(被告本人の供述によれば〝アツ〟というまに)衝突し、原告は被告車のボンネツトにのつて衝突地点から二、六メートル飛ばされた事実が認められ、また証人諫原輝也の証言によれば原告車は本件事故により大破した事実が認められる。そしてこれらの事実に、原告本人が原告車の事故時の速度について時速三〇キロメートルから四〇キロメートルであつたとの供述をしていることをあわせ考慮すると、原告は制限速度三〇キロメートルをかなり超過して走行していたことをうかがうことができる。

以上の諸事実を総合して、以下原告の相殺すべき過失の割合を検討する。

前記乙第一号証及び検証の結果によれば、本件道路の巾は四、五メートルであつて、乗用車二台がゆつくりした速度でならすれちがえる位の比較的狭い道路である事実が認められ、そうするとそこを進行する車両としては、両側道路外から進入してくる歩行者や車両を予想して道路中央付近を走行することもあながち責められる事柄ではなく、従つて原告が道路中央のやや右側を進行していたことをもつて重大な過失とまでいうことはできない。

これに比較して被告の、道路外ら道路へ進入する際の前述注意義務違反による過失はより大きいと考えられるが、結局原告には前記のとおり速度超過の事実がうかがえることを付加して考慮し、但し、加害車両が普通貨物自動車であるに対し、被害車両が原動機付自転車であることから優者負担の原則を適用して二割の割合で過失相殺することが相当である。

三  損害

(傷害による損害)

原告が本件事故により右下腿骨骨折の傷害を負い昭和五五年七月二七日から同五六年二月一八日まで県立一戸病院において入院治療を受けた事実は当事者間に争いがない。

そして成立について争いのない甲第五、第六号証によれば、原告は本件事故により、膝関節に約一〇センチメートルの開放創を受け、その部位より骨が露出し、さらに骨折の傷害を受けた事実、そのため手術を受け約二か月のギブス固定後機能訓練を受けたが、右膝屈曲八〇度、伸展〇度で長時間の歩行には杖を必要とし、正座不能などの関節運動障害の後遺症を残した事実が認められる。

ところで証人諫原輝也の証言によれば、原告は内臓の病気もあつてその治療をも受けた事実が認められるけれども、前記甲第六号証によれば、原告はその主治医から、本件事故による前記傷害については昭和五六年二月一八日まで治療を継続したものとされ、同日まで前記傷害の治療期間とされた事実が認められ、また前記傷害に関する前認定によればかなり傷害の程度は重いものと認められ、たとえ内臓の病気がなくともそれだけで充分の治療を要するものと判断されうるから、前記争いのない入院期間をもつて本件事故による傷害のためのものと認めてさしつかえなく、従つて以下付添費等の算定について右期間をもつて基準とすることは相当である。

1  付添看護料

前認定のような傷害であれば付添を付することは相当であり、証人諫原輝也の証言によつて真正に成立したものと認められる甲第一三号証、同じく一五号証の一、二及び右証人の証言を総合すれば、原告は入院中、左のとおり付添を受けた事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はなく、付添看護料の合計は金三八万六〇六〇円となる。

(一) 妻キミヨ 昭和五五年七月二七日から同八月二四日まで(二九日間)

3000円×29日=8万7000円

(二) 職業付添人 同八月二五日と二六日(二日間)

1万5060円

(三) 姉トミ 同八月二七日から同一〇月一五日まで(五〇日間)

2800円×50日=14万円

(四) 妻キミヨ 同一〇月一六日から同五六年二月一八日まで週三回(月水金)の入浴のため(四八日)

3000円×48日=14万4000円

2  通院交通費

証人諫原輝也の証言によれば原告の親族が、その住所地から二五キロメートル離れた入院さきの一戸病院へ付添に行く際、家業の仕出し屋の稼働の時間帯により国鉄あるいはバス、さらに国鉄やバスの都合がつかない場合にはタクシーあるいは自家用車を利用した事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はなく、証人諫原輝也の証言によつて真正に成立したものと認められる甲第一二号証の一ないし九七、同一四号証及び右証人の証言を総合すれば、右交通費の内訳は次のとおりであることが認められ、合計金四一万三六一〇円となる。

(一) タクシー代(甲第一二号証の一ないし九七) 金二五万六四二〇円

(二) バス代(甲第一四号証) 金三万一八〇〇円

(三) 国鉄料金(〃) 金六八九〇円

(四) ガソリン代(〃) 金一一万八五〇〇円

原告の長女が自家用車で自宅から一戸病院まで片道二五キロメートルを七九回往復したガソリン代(一往復金一五〇〇円)

3  マツサージ料金 金一万八〇〇〇円

証人諫原輝也の証言によればマツサージ料金として右金員を出捐した事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

4  入院諸雑費は次のとおり 金一六万五六〇〇円相当である。

入院諸雑費については原告は日用品等の他に簡易トイレ、白着等の請求をし、証人諫原輝也もそれらを購入した旨の証言をしているが、それらを含めて入院諸雑費は一日金八〇〇円とするのが相当である。

800円×207日=16万5600円

5  入院中休業による損害

原告が昭和五五年七月二七日から同五六年二月一八日までの二〇七日県立一戸病院において入院治療を受けた事実は前記のとおり当事者間に争いがない。

ところで証人諫原輝也の証言及び原告本人尋問の結果によれば、原告は調理士として食堂を経営し、さらに仕出しや出張料理を行つていたが、右入院期間中はほとんど休業の状態であつた事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

そして証人諫原輝也の証言により真正に成立したものと認められる甲第八号証及び右証言、原告本人尋問の結果によれば、原告は昭和五五年において本件事故にあうまで金一九四万六四一円の営業による所得を得ていた事実が認められる。

ところで被告は右金員から、専従者給与の額及び青色申告控除の額を差し引いた金額をもつて所得額とすべきであると主張する。しかし専従者控除は、家族の労働から成り立つ個人事業について、他人を雇用した場合と比較して課税上の不公平を生ずるのを是正するために税法上設けられた制度であり、青色申告控除についても、正確な記帳を奨励するために税法上設けられた制度である。従つて交通事故の損害賠償の関係においては、右両控除をなす以前の所得額をもつて所得となし、原告以外の事業従事者の労働の評価については、原告の事業に対する寄与率の算定において考慮すれば足りるのであるから、被告の右に反する主張は失当であり、他に前認定を覆すに足りる証拠はない。

そして証人諫原輝也の証言及び原告本人尋問の結果によれば、原告は二人の使用人と妻との四名で前記の営業をなしてはいたものの、出前や献立及び出張料理の食器や材料運搬に至るまで原告がなしていた事実が認められ、右認定に反する証拠はなく、従つて原告の事業に対する寄与率は七〇%とするのが相当である。そうすると入院中の休業による損害は次の式により金七七万四〇七円(原告主張額)を下らないこととなる。

194万0641円÷207日×207日←昭和55年の事故に至るまでの日数×0.7=135万8448円

6  傷害に対する慰藉料

成立について争いのない甲第七号証によれば、原告は昭和五六年七月二七日から同年九月二七日までの六三日間、あらためて手術施行のうえ入院した事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そして前記争いのない入院期間とあわせると九か月となり、それに対する慰藉料は金一五〇万円が相当である。

7  後遺症による損害 次のとおり計金七〇七万九四二〇円となる。

(一) 逸失利益

前記甲第五、第六号証、証人諫原輝也の証言及び原告本人尋問の結果を総合すれば、原告は本件事故による傷害により、右膝屈曲八〇度、伸展〇度で長時間の歩行は杖を必要とし正座不能などの後遺症を受け、身体障害者福祉法施行規則別表第五号の第五級と認められ、また起居についても介添えを必要とし、立つているのみでさえも杖が必要でしかも痛みを覚えて長時間は立つておられないから、調理や配達はできず、せいぜいこしかけて客から注文をとることくらいしかできず、従つて原告の前記営業はほとんど不可能である事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そして前記甲第五、第六号証によれば退院時の昭和五六年二月一八日(当時の年齢六六歳)をもつて症状が固定したものと認められる。また右年齢においては転職も不可能であると認められる。そして右認定の事実から労働能力喪失率は八〇%と認むべきである。以上により逸失利益は次式のとおり金五五七万九四二〇円となる。

194万0641円←前認定の年間所得×0.7←前認定の本人寄与率×0.8←労働能力喪失率×5.135←就労可能年数6年のホフマン系数=557万9420円

(二) 慰藉料

証人諫原輝也の証言及び原告本人尋問の結果によれば原告は前記後遺症について自動車損害賠償保険法施行令別表一二級の認定を受けた事実が認められこれを覆すに足りる証拠はない。右後遺症による慰藉料は金一五〇万円が相当である。

(物損)

8 証人諫原輝也の証言及び原告本人尋問の結果によれば原告車の損壊による損害は金二万円である事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

以上を合計すると金一〇三五万三〇九七円となる。これを二割の割合をもつて過失相殺すると金八二八万二四七八円となる。

9 補填された金額は次のとおり計金二二三万円となる。

(一)  成立について争いのない甲第一七号証の一、二及び証人諫原輝也の証言によれば、後遺症による損害に対して自賠責保険から金二〇九万円の給付を受けた事実が認められる。

(二)  被告が見舞金品として合計金一四万円相当を交付した事実は当事者間に争いがない。

以上を前記合計金から差し引くと金六〇五万二四七八円となる。

10 弁護士費用は金八〇万円が相当である。

右を前記金員に加すると総合計金六八五万二四七八円となる。

四  よつて原告の本件請求は、損害賠償請求金のうち金六八五万二四七八円と、これに対する事故発生の日の後である昭和五六年一一月七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 村上久一)

別紙図面

〈省略〉

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